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まぎあっと。PSO2

PSO2をしながら、その雑記、初心者向け講座、そして自作小説など書いていくブログです

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 Time After Time 1章 託された想い 第Ⅲ話




 窓から綺麗な明かりが差し込む。

 雲一つない夜空に浮かぶ球体を見ていると、吸い込まれそうな不思議な気持ちになる。

 今夜は満月のようだ。

 目線を上へ移す。

 真っ白な壁――いや、天井だ。





「最初に目を覚ました時も、真っ白い天井だったなぁ」



 あの病院の天井はとても冷たそうな作りだった。

 病院で過ごす夜は、どうにも孤独感が押し寄せてくるようで、正直怖かった。

 でもシュナイゼルの家で寝るようになってからは、なぜか安心して眠ることができる。

 家族と過ごすという暖かみがあるから、だろうか……



 ――カチリ、カチリ

 静かな空間に、無機質な時計の音だけが鳴る。

 その音は、空間に溶け込むかのように、部屋の主に時の流れを伝える。

 

 そんな独特さを持った ”夜中” という空間を、私はとても好き。

 何かを深く考えるには、この場か、お風呂と決めている。

 専門的な事は言えないけど、そこらが一番考えることが出来る。



「あれからもう七年、かぁ……」



 誰に言うでもなく、空に呟く。

 那波は毎晩のように、こうして物思いに耽っていた。

 外国できっと名を上げているんだ、次はいつ会えるのだろうか?

 昔はそう考えていた。

 だが、シュナイゼルの家に住むようになってからは、次第に考えが変わっていった。

 外の世界の情報――

 様々なメディアを通じて、今起こってる事故や、それに関するニュース。

 この世界の経済状況など、いろいろ目に、耳にすることが増えた。

 あの事故のことも……



 名前も出てなかったし、あまり深くも報道されていなかったが

 炎に包まれた研究所から救出され、カメラに写っていた一人の生還者……

 その姿は5歳の時の私だった。

 名前が出なかったのはシュナイゼルの配慮だろう。

 所在が明かされてしまえば、少なからず注目を浴びることになる。

 疫病神だの、災厄の子供だのと、後ろ指を刺され、生活しづらくなる。

 だがそれ以前に、研究所施設の場所は愚か、職員の名前すら出てこないのは、少し疑問を感じていた。


 
 それからは、両親が生きてどこかで活躍してる、という考えは出来なくなり

 無事なのだろうか、いつか迎えに来てくれるのだろうか?

 と、心配するようになっていた。

 その後もこうして一人でいる時は、夜な夜な泣くことも多くなった。

 記憶も失い、両親まで失ったかもしれない。

 不確定な事象に不安を煽られ、次第に追い詰められるようになっていた。

 ……しかし、それも昨日ではっきりした。



 シュナイゼルが昨日、全てを教えてくれた。

 確かに私にはショックだった。

 両親は死に、残っているのは形見のペンダントしかない。

 でも、全てを失ったわけじゃない。

 記憶も両親も失くしたが、それでも支えてくれる人がいる。

 支えられて、今も私はこうして生きている。

 寂しい気持ちはある、だけど……



「そこで立ち止まってたら、本当に終わっちゃうよね……」



 私の両親はもう、この世にいない。

 だけど私には、家族と呼べる存在がまだある。

 ならそれを大事にしていきたい……

 そう想いながら、ペンダントを強く握りしめ眠りについた。



「おやすみ、お母さん……私頑張って生きていく、から……見て……」














 暖かな日差しとともに、鶏の鳴き声が聞こえる。



「そういえば近所に鶏を飼い始めた変わった人がいるんだっけ……」



 目を擦りながら那波は体をゆっくりと起こした。

 結構な鳴き声なので、目覚ましには丁度良いのだが……



 階段を降りて行くと、何やらバタバタしているシュナイゼルの姿があった。



「おじさん、おはようー。 どうしたの、そんなに慌て……ふあぁ」



 話してる途中にあくびが出てしまった。

 昨日少し遅くまで起きすぎただろうか。



「おお、おはよう。 どうした、寝不足か?」 

「うーん……ちょっと夜更かししすぎたみたい」

「しっかり寝ないと体に触るぞ。 なんだ、恋の悩みか!」

「いや、違うし……」

「うーむ、年頃の娘を持つと親は大変というが……」

「だから違うってば! おじさんこそ、そんなバタバタしてどうしたの?」

「ん、ああ。 実はだな……」



 えらく急な話だった。

 なんでも、少し遠いところへ調査に出かけなければならなく、

 約三ヶ月間、泊まりこみで現地へと出向くそうだ。

 しかし……前々から思っていたが……



「おじさんってさ、準備はギリギリまでしないタイプだよね」

「そ、そんなことはないぞ! まぁ少し、遅れてしまう事もあるが……」

「でも三ヶ月かぁ……」



 那波は少し気が重たい顔をした。

 長期任務は今までもあったが、三ヶ月間というのは知る限り、過去最長だ。

 今まではどんなに長くても一ヶ月程度だった。

 元々料理が不得意なシュナイゼルに代わって、那波が作る事が多かったため、自炊の方には多少自信がある。

 しかし三ヶ月となると……色々と不安だ。



「そう心配するな。 今回はお手伝いさんにもお願いしてある」

「お手伝いさん? どんな人なの?」

「頭もよく、しっかりとした人だぞ。 もうすぐ来るはずだが……」



 そう言うと同時に、玄関の方から呼び鈴が鳴った。

 どうやら ”お手伝いさん” が来たようだ。

 シュナイゼルが客をリビングまで案内してくる。



「紹介しよう。 俺の部下のラミネ君だ」

「初めまして、那波ちゃん。 ラミネ・アレクサンドリアよ」

「あ……那波です。 その……よろしく、お願いします、アレクサンドリアさん」

「そんな固くならないで、ラミネでいいわよ。 よろしくね」



 少しぎこちない挨拶になってしまった。

 普段、シュナイゼル以外の人と初めて会う時はいつもこんな感じだ。

 那波はあまり他の人と話すことがないので、初見の人相手とはうまく話せないのだ。

 そうしていると、 ”じゃあ俺は支度の続きをしないとな!” と言いながら、シュナイゼルは準備を再開していた。



 適当に挨拶を済ませた後も、ラミアは頻繁に話しかけてきた。

 少しでも緊張を解そうとしてくれているのだろう。

 那波も徐々に、口数を増やしていった。



 数時間後、シュナイゼルから声がかかった。



「これから少しの間会えなくなるから、どうだ、皆でどこか行かないか」

「じゃあ……イルカショー見に行きたい!」

「水族館か! よしいいだろう、支度してきなさい」

「うん!」

「いいですね。 お二人でご堪能してきてください」

「何を言っているラミネ。 お前も一緒に行くんだぞ」

「え?! わ、私もですか……?」

「当然だろう、皆で、と言ったのだ。 行きたくないのか?」

「ラミネさん……一緒に行ってくれないの?」

「い、いや……そういうわけでは……」

「残念だな那波、ラミネは一緒に行きたくないらしい……」

「せっかく、一緒に行けると思って楽しみにしてたのに……」



 軽く泣く真似をしてみた。



「い、行かないとは言ってません! 行きますよ!」

「ほんと! やったぁ、嬉しいなぁ」

「よかったなぁ那波。 俺もラミネの私服姿が見れて嬉しいぞ!」

「隊長、セクハラです」

「おじさん、サイテー……」

「……はい。 すみませんでした」











 こうして那波達は三人で、水族館へと来ていた。

 今日が日曜日でもあったため、客は多めだった。

 子連れの客や、カップルの客、

 死んだ魚の目をしながら、孤独に水槽の中を覗く客もいて、結構な賑だった。



「イルカのショーは14時からか」

「……まだ少し時間がありますね。もうお昼ですし、何か食べます?」

「うむ、そうだな……じゃあ、あそこのレストランで時間をつぶすか」

「私、ミックスグリル食べたい!」



 他愛もない会話……

 三人で食事をして、どうでもいいことを話し、笑う。

 どこにでもある、平穏な生活。

 そんな日々を送れる今が、本当に幸せ……

 そう思っていると、目に涙が溢れてきていた。



「ん、那波!? ど、どうした、急に泣きだして!?」

「あ……あれ、どうしたんだろ……なんか涙が……」

「何か、辛いことでもあったの?」

「ううん、でも、何かな……家族って、やっぱりいいなって思ってさ」

「那波……」



 那波は涙を拭い、微かに微笑んだ。



「私、本当はすごく不安だったの」

「毎晩のように両親の夢を見ていたわ。家族三人でご飯食べて、公園に行ったり、笑い合ったり……とても暖かな家庭の夢」

「いつかは絶対、そんな日々が戻ってくると信じてた」

「だけど、結局戻ってきたのは、このペンダントだけ……」



 ペンダントを強く握り、話を続けた。



「この先も、夢で見たような家族三人で暮らす日なんて、もう来ないだろうって諦めてた」

「でも、おじさんやラミネさんとこうして水族館に来たり、食事したりしてると……」

「なんだか本当の家族みたいだなって、思うんだ」



 家族――

 実の親を失った私には、家族と呼べるものがない。

 ……いや ”なかった” 。

 でも今は、おじさんやラミネさんがいる。

 たとえ本当の家族じゃなくても、とても充実しているように思える。

 私にとって ”第二の家族” と呼べるような存在……



「当然じゃないか」

「え?」

「那波を引き取ったあの日から、俺達は家族同然だ」

「…………」

「だからお前も、何かあったら一人で悩まず、助けて欲しい時はそう言うんだぞ」

「……うん!」

「これからは私にも、頼ってくださいね? 隊長だけでは女の悩みには対応できませんからね」

「お、おいラミネ……」

「ありがと! おじさん、ラミネさん!」

「さ、そろそろショーが始まってしまいますよ。行きましょう」





 その後は、三人でイルカショーを堪能した。

 トレーナーとイルカのコンビネーションは凄いもので、見事に連携がとれていた。

 帰りにはお土産コーナーにも立ち寄った。

 那波は一目散に ”水族館限定! ミルククッキー” と書かれた箱を手にしてレジに並んだ。

 お土産コーナーにくると、なぜか無性に欲しくなってしまう品なのだ。



「あ、これ可愛い!」

「なんだラミネ、意外だな。てっきりそういう小物類は興味ないのかと思っていたが」

「隊長……私だってこれでも女の子ですよ?」

「……お前、もう26だろ。子っていう程……」



 そう言いかけた時、シュナイゼルの鳩尾に拳が入った。

 シュナイゼルは声にならない叫びをあげて、その場でうずくまる。

 そんな光景を見ていると、なんだか心が暖かくなる感じがした。



「おじさん、ラミネさん」

「ん?」

「どうしたの?那波ちゃん」

「……また三人で来ようね!」











 水族館を出た後、那波とシュナイゼルは家に帰り、ラミネはひとまず自宅へ戻った。

 明日から泊まり込みということもあり、色々準備をするそうだ。

 それにしても……楽しい時間というのは、早く過ぎ去ってしまうものだ。

 思えば、シュナイゼルと何処かへ出かけたことなど、殆どなかった。

 別に関係が悪いというわけではなく、シュナイゼルの職業柄、中々時間が取れなかったのだ。



「おじさん」



 呼びかけると、向き合って座るシュナイゼルは優しく微笑んだ。



「どうした?那波」

「……今日は、ありがとね」

「いきなりどうした」



 シュナイゼルは一転、少し驚いた顔をする。



「一緒に遊びに行く時なんて、あんまりなかったからさ、その……とても楽しかった」

「……そうだなぁ。アークスなんて仕事をやっていると、中々時間が取れないからな」



 市民の平和を守るのがアークスの仕事。

 ダーカーの襲撃や、他の惑星の調査、緊急時に招集がかかることもある。

 あまりまとまった時間がとれないのも辛い所らしい。



「すまなかったな、那波。仕事とはいえ、今まで家族らしい事をしてやれなくて」

「ううん、そんなことない。おじさんが忙しいのも知ってるし、仕事に誇りを持ってることも解ってるつもり」

「……ありがとう」



 その言葉には、どこか少し、暗い部分があるように感じた。



「どうしたの?」

「ああ、いやなに……ちょっと昔のことを思い出してな」

「昔?」

「那波には、話してなかったかな。俺には妻と息子がいたんだ」



 初めて聞く話だった。

 息子の歳は私と丁度同い年くらいらしい。



「もう、別れて十年になるか……」



 と、思い出すように、シュナイゼルは呟く。

 離婚の原因は考えの相違にあったそうだ。

 子供が生まれてからも、シュナイゼルは仕事で忙しく、中々家族サービスも満足に行えていなかった。

 彼自身、悪いという気持ちはあったものの、アークスという職業である以上、家庭を優先するわけにもいかなかった。

 結局奥さんはそれに耐えられず、離婚し、子供を連れて彼の元を去っていったのだという。

 それ以来直接会ってはいないものの、ごくたまに、息子から手紙が届くそうだ。

 息子は、市民を守る仕事に誇りを持った父に尊敬しているようで、手紙の中には自分の夢も語られていた。



「”いつか自分も、父さんのような立派なアークスになります” と、書いてあってな……」

「なんて返事をしたの?」

「いや、返事は書いてない。それに……」

「それに?」

「こんな親としての責務を全うできてない俺に、今更父親ぶる資格は……」

「そんなことはないよ!!」



 私は机を叩き、少し強い口調で言った。



「おじさんは私から見ても、立派で尊敬する父のような存在だよ!」

「変態で、だらしがない所は確かにあるけど」

「正義感が強くて、優しいし。不器用だけど、大事なものの為に一生懸命になって動いてること、私は知ってる」

「おじさんは私にとっても自慢のお父さんだよ」

「那波……」

「だから返事、書いてあげて? きっと息子さんもそれを望んでいるはず」

「……そう、だな。書いてみようかな」

「うん!その方が喜ぶと思うよ!」

「……情けないところを見せてしまったな、すまなかった」

「じゃあお礼に、任務から帰ったらパフェ食べに連れてってよ?」



 と、悪戯顔で言ってみた。



「ハッハッハ! ちゃっかりしてる奴だなぁ! よし、いいだろう」

「やったね!」

「……ありがとう、那波。流石、俺の自慢の娘だ」



 そう言って、頭を撫でてきた。



 今日、水族館に行って改めて実感した。

 シュナイゼルは那波にとっても、父のような存在なのだと。



(この人がいてくれたから、今の私がある……)



 いつまでも、こんな日々が続きますように……











 そして次の日――



「それでは、行ってくる」

「……うん」

「どうした、元気ないじゃないか?」



 シュナイゼルが出発するので、その見送りをしていた。

 たった三ヶ月……長くは感じるがきっとすぐ経つ。

 それなのに、この感じはなんだろう。

 もやもやと心の奥で不安が渦を巻いている。

 長期任務はこれまでにあった。

 確かにその度に無事で帰って来てくれるかという心配はあった。

 だが今回のは……



「大丈夫ですよ、那波ちゃん。もう会えなくなる訳じゃないんですから」

「それに今回の任務はただの調査だ。いつも通り、無事ここに帰ってくる。」



 そうだ、別に戦地へ出向く訳じゃない。

 多少危険は伴うかもしれないが、シュナイゼルは隊長でもあるのだ。



「そう、だよね。ゴメン、なんか急に不安になっちゃって……」

「大丈夫だ。そうだ、また帰ったら水族館に行こう!」

「ほんと! あ、でも今度は遊園地がいいな」

「遊園地か、いいだろう。好きなとこに連れてってやる」

「約束だからね!」

「ああ、約束だ。それじゃ、行ってくる」



 そう言って、シュナイゼルはこちらに背を向け、歩き始めた。

 なにも不安がることはないはずなのに、その背中を見ていると

 不安の渦は徐々に大きさを増していった。


 もう二度と会えなくなるような――

 
 そんな気持ちが私を支配していった。




 後に那波は後悔することになる。

 なぜ、止めれなかったのか。

 いや、止める術は無かったのだろう。

 これは運命なのだと、思い知る。

 自分のあまりの無力さを、嘆くことになる――






Time After Time 1章 託された想い 第Ⅲ話  END

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