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まぎあっと。PSO2

PSO2をしながら、その雑記、初心者向け講座、そして自作小説など書いていくブログです

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 Time After Time 2章 第三話 『新しい環境』



  何もない、ガランとした空間。
  扉を開けるとそこには闇が広がっていた。


「ただいま……っと」


  そう誰もいない空間に向かって言い扉を閉め、暗闇の中手探りで電気のスイッチを探る。
  パチっとプラスチックな音と共に、人工的な光が暗闇から室内を救い出す。
  ここは那波の部屋。

  入隊した時に希望すれば部屋を借りることができるのだ。
  那波の部屋はほぼ、借りた時の状態そのままだ。


「……ふう」


  無造作に床に敷かれた布団へと、体を埋める。
  寝る場所と食事……最低限の生活が出来れば良かった為、実に殺風景で文字通り何も無い。
  あるのは今自分が体を預けてるこの敷布団と、元々備え付けられていたかび臭いちゃぶ台だけ。
  とても他人を招き入れられる様な部屋ではない。


「9時……か、何か腹に入れないと……」


  窓からは黒い背景に赤色の小さなランプや橙色の灯りがポツポツと見える。
  冷たい空気が窓からも伝っており、開いてもいないのに肌寒さを感じる。
  きっと今日は冷えるのだろう……。
  だがそんな気温的なものとは裏腹に、窓に映るこの風景はどこが温かいものを感じる。
  どこからか笑い声が聞こえてきた。
  楽しそうに笑う複数の人の声。


「今日も騒がしい奴らだな……」


  昨日も夜通し、誰かと笑い合う声が聞こえていた。
  しかし、不思議と嫌な気分にはならない。
  人が笑えるというのは、それだけ平和な証なのだから……。





「ん……んんぅ……ぁ痛っ」


  寝返りを打つと頭に不意な衝撃が走る。
  目を薄く開けると、最後に見た景色とはまるで正反対の風景が窓に映っていた。
  どうやらいつの間にか寝てしまったらしい。
  窓から眠気を促進するぽかぽかした暖かい光が差し込む。
  冷たい空気は夜の仕事を終え、陽気な暖かさと交代したようだ。
  これから次の仕事まで冷たい空気はおやすみする事だろう。こっちは無理にでも体を起こさなくてはならないというのに。畜生め。
  壁にぶつけた箇所をさすりながらムクリと起き上がる。
  短い針は数字の5と6の間を指していた。


  部屋を出た那波は十四番隊の職務室へと出向く。
  途中の自販機で買ったOSSUと刻印された缶コーヒーを片手に扉を開けた。


「おはようございま……す……?」


  言いかけた所で人気が無い事に気づく。
  灯りもついてなければ、プラカードも表になってない。
  うちの部署は出勤したら自分の名前が入ったプラカードを反転させる事になっているのだが……


「……?」


  今日は休日だったか? とも思ったがそんなことは無い。
  棒立ちしている那波の背後に気配がした。


「あれ、那波? 今日は休みだと聞かなかったのかい」


  振り向くとそこには部隊長クラン=マーキナスが「よう」と言わんばかりに立っていた。
  いや、それよりも休みとは初耳だ。


「何も連絡受けてないんですが……」
「えっ、本当?! すまなかったね……昨日あんな事があったから、臨時休養にしたのさ。健太郎に連絡頼んだのになぁ」


  そういう事だったのか。
  確かに、ただの演習でなく予想外の事が起きてしまった。
  実際に怪我をした者もいたし、当然と言えば当然か。


「そうだったんですか……あ、これどうです? この前のお礼という事で」


  手に持っているよく冷えた缶コーヒーを差し出す。


「おっ、貰うよ。ありがとう」


  プシュっとプルタブを持ち上げる音が二人の手元から鳴る。
  自販機のものはよく冷えていて、朝の相棒としては実に頼りになる存在だ。
  ミルク多めの割合で少し甘いのがまた美味しい。


「うん、やっぱり朝から飲む缶コーヒーは旨いね。というか、よく僕が甘党だと解ったね」
「昨日もらったカロリーメイトもチョコレート味でしたし、隊長が手にしてたのもいちご味でしたからそうかなって思って」
「おおー、その通り! 気が回る女性はモテるよー」
「ははは……」


  敵であれ味方であれ、観察は怠るな。どんな些細な事でも見落とすな……それがミレイユからの教えだったからだ。
  その後、話もそこそこに那波は一度部屋に戻ることにした。
  せっかく休みになったのだ。たまには鍛錬でもしようかと思う。
  ミレイユにも日頃から怠るなと言われていたのを思い出す。
  あの人の元で暮らしてた時はよくしごかれたものだ。
  常に死と隣り合わせの環境で、時には寝るときすら神経を研ぎ澄まさねばならない事もあった。
  その他にも雑用まで押し付けられていた気がしなくもないが……
  だがあの時があったからこそ、今の自分があるのだろう、と那波は思う。


  鍛錬のメニューを考えながら通路を歩いていると自室の前に、片手を扉にぶつけコンコンと鳴らす姿が見えた。


「あっ……那波さん!」


  こちらの姿を捉えて声をかけてきたのは健太郎だった。
  ……那波"さん"?


「いくら呼んでも出てこなかったのでまだ寝てるのかと思いましたよ」


  続いてニーナが、健太郎の肩を担ぎにこちらへ駆け寄ってきた。
  いつもならここで健太郎が「やめろよ恥ずかしい!」と恥ずかしがる所なのだが、それとは打って変わってしっかり体を預けていた。


「傷は大丈夫なの?」
「ええ、お陰様でこの程度で済みました」


  と、健太郎が質問に苦笑いを添えて返す。
  昨日とは全くの別人のような、礼儀正しい対応だ……


「あの、那波さん。昨日はすみませんでした」


  ニーナに預けていた腕を自分の元へ戻し、健太郎が深々と頭を下げる。
  しかし、体に障ったのかその反動で健太郎の体が少しよろめいた。


「お、おい……大丈夫か?」


  すぐさま那波とニーナが支えに入ったので、特に問題は無いようだ。


「立ち話も何だし、入る……あっ」


  「入るか?」と言おうとしたが、部屋がゴミ溜めのような状態なのを思い出した。
  とても他人を招き入れれるような状態じゃない……。


「す、すまん、少し待っててくれ……」
「えっ、あ、お構い……」


  というニーナの返答も待たぬうちに那波は勢い良く扉を閉め、脱ぎ捨てた下着やゴミなどをひとまず隣の部屋へ押し込んだ。
  その場だけ乗り切ればいいのである。
  ……ちゃぶ台と古臭い座布団しか無い空間だが。


「お待たせ、どうぞ」
「は、はい……お邪魔します」


  ニーナが少しおどけた声で部屋へと上がる。
  慌てて片付けた音が外までかなり響いていたことだろう、が、気にしない。


「何も……あ、スッキリした部屋ですね……」


  「今何もない部屋、と言おうとしたよね?」という台詞を飲み込み、気を使ってくれたことに苦笑いでお返しする事にした。
  まさかこの部屋に他人が入る事になろうとは……今度家具屋でも行ってみるか。


「まぁ、ほとんど何も置けてないからね。それで、今日はどうしたの?」
「いえ……ただ、昨日の助けてもらったお礼と、あと……謝りたくて」
「謝る?」
「数々の無礼、本当にすみませんでした!! あ痛っ!」


  首を傾げる那波を前に、健太郎は勢い良く立ち上がるものの
  またしてもその反動でフラッと倒れそうになるものの、今度は何とか踏みとどまった。


「と、とりあえず無理しなくて良いから座りなって」
「いえ! でも俺……あ、いえ、自分は」
「健太郎」


  無理をして姿勢を維持する健太郎に対して見兼ねたのか、ニーナも健太郎に一声を浴びせる。
  健太郎も観念したのか、静かに腰を下ろすことにしたようだ。


「俺……じゃなくて自分はっ」
「いつも通りでいい」
「……はい。俺、念願のアークスになれて、これでやっと一人前になったんだって自惚れてたんです。自分は強くなったんだって。でも、全然全くそんなことはなかった……。ちょっと不測の事態が起きたくらいで錯乱して、挙句考えなしに突っ走って……ニーナも、守れなくて」
「…………」


  しばらくの沈黙が流れた。空気が重たい。
  ほんの一瞬のはずなのに、数十分も経ったようにも感じられる。
  あのプライドの高そうな健太郎がここまで言ってきているのだ。これも経験が人を変えるということなのだろうか。


「……まあ、仲間を守るって突っ走るのもいいけど、もっと自分を大事にしな。アンタが死んだら、悲しむ人がいるって言うことを忘れなければ、それでいいんじゃないかい?」


  那波はそう言いながら、ニーナの方へ目線を向ける。
  ニーナもそれを受け取ってか、少し俯く。


「……はい。すみませんでした」
「私も、ごめんなさい……」


  ニーナも同時に頭を下げてきた。
  再び来る沈黙の時間。正直こういうのは苦手だ。


「だあーもう、はい、おしまい!! 皆無事に帰れたんだから、次から気をつければいいことよ。アンタ達朝飯は?」
「えっ……まだ、ですけど」


  二人共キョドった態度で返事をする。
  飯も食わずに謝罪に来るとは……ご苦労なことだ。


「よしっ、じゃあなんか食いに行くよ! ここに居ても飯なんか出ないんだから。奢ってやるよ」
「えっ、でも……」
「その怪我だって、栄養摂ったほうが早く治るってもんさ」
「分かりました、じゃあお言葉に甘えて」
「おっと、もう敬語は無しだよ。同期だし、歳なんてそう対して変わんないんだからね」
「あっ……おう!」


  健太郎もようやくいつもの調子に戻ったようだ。
  変に気を使われるとそれはそれでやりづらい。
  

  その後も何を食べるか、休みをどう過ごすのかなど、会話らしい会話を続けていた。
  那波にとっては、歳が近い人と日常会話をするのは初めてでとても斬新な感じがしたが、不思議と楽しい気持ちになれた。
  隊に入っても孤独にやって行こうと決めていたが、やはり話せる人がいるというのは良いものだ。











「ふふ、どうやら那波にもいい友達ができそうですね」
「年頃の女性の部屋の前で盗み聞きして、なーに言ってんだい」
「そういう先生こそ、同じようなもんじゃないですか。昨日の一件で心配になって、いてもたってもいられなかったんじゃないんですか?」
「…………」


  ふぅ、と口から白い煙を出しながら「まぁね」と口にする。
  壁に寄り添いながら吸い終わったタバコを携帯用の灰皿に投げ込んだ。


「ま、その心配も無かったようだし、あの娘も上手くやってるようで良かったよ」
「それもこれも、あの人のおかげって所ですかね」
「かもね……。じゃあそろそろあたしゃ行くわ。またなんかあったら連絡頂戴よ。あと例の件もよろしく~」


  新しいタバコに火を付け、片手を振りながら赤毛の女性は去っていった。
  それを見送るクラン。


「やれやれ……通路は禁煙だっていうのに、困ったお方だよ……」


  「さてと」と言いながら胸ポケットから電話を取り出し、番号を入力する。


「あ、もしもし。ごめんね忙しかったかな? ……うん、例のこと、許可はするけどあんまり派手にはやらないでくれよ? ん、それじゃあね」


  ピッと音と共に通話を終了させる。
  

「さてさて……面倒なことにならないといいんだけどなぁ」




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