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まぎあっと。PSO2

PSO2をしながら、その雑記、初心者向け講座、そして自作小説など書いていくブログです

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 Time After Time 2章 第四話 『息子』



「よし、では今日はこれで終わり。みんな明日に備えて早く寝るように、解散!」
「お疲れ様でした」


  ナベリウスにダーカーが大量発生した事件から二週間が過ぎた。
  健太郎達の傷もすっかり癒え、那波たちは通常業務へと戻り、活動していた。
  今日もその仕事を終え、各自自室へと戻る。
  後から本人に聞いた話だが、健太郎もニーナも部屋を借りているらしい。


「あぁ、那波」


  隊長のクラン=マーキナスが那波を呼び止めた。

「お前宛に手紙を預かっているよ。ほら」
「私に……?」
「大丈夫、人の手紙を勝手に読んだりはしないよ。それじゃ、お先」


  そう言われて手渡される長方形の黄土色の封筒。
  中には 「午前一時にB地区の東公園の中央で待つ」 と書かれていた。
  花がら便箋でもなければファンレターというわけでもなさそうだ。
  差出人の名前すら書かれていない為、悪戯や間違いの可能性もあったが、文末の一文で見過ごせないものとなった。


「”シュナイゼルの義娘へ”、だと……」


  入隊後、那波がシュナイゼルと関係していたという事実を口にしたことは無いし、その事を知る者は限られている。
  その上殆どの情報が漏れないようにラミネが手を加えているはずだ。
  わざわざシュナイゼルの名をあげてる辺り、嫌な感じしかしない。


「……B地区の、東公園か。よし」


  だがこちらとしても手がかりを掴む絶好のチャンスだ。これを逃す手はない。
  那波は一度自室へと戻り、準備をしてから指定された場所へと向かった。
  用意するに越したことはない。





「ここか……」


  いつもは子どもたちが集う憩いの場なのだが、今は午前零時。
  辺りに人気もなく、街灯の明かりだけが寂しく夜を照らしている。
  時間も時間なのか中々に冷え込んでいたが、那波の格好は動きやすいズボンとTシャツに上着のみだった。
  これからあの怪しい手紙の差出人と……最悪戦闘になるかもしれないのだ。装飾などの飾りは不要。
  少し早く来すぎたか。だが下調べをするには良いかもしれない。


「まだ相手は来てない、か」


  早速罠でも無いか調べようとしたその矢先だった。


「指定の時間は一時にしておいたはずだがな。ちょっと約束の時間より早いんじゃないか? せっかちな女は嫌われるぞ」


  静寂の中で突如響き渡る野太い男性の声。
  と、同時に数発の銃声によって周囲の街灯が破壊された。
  街灯のお陰で微かに明るかった夜の公園は、一瞬にして漆黒の闇へ包まれ視界を零にする。


「っ! デートに銃を持ってくる男に言われたか無いね!」


  次の瞬間、足元に五、六発発砲をしてくる見えない敵。


(いきなり発砲とは……最初から戦闘が望みかい……!)


  那波は即座に後ろへ飛び移り、近くにあったはずの茂みへと身を潜めた。
  成る程、さすがにこの暗闇でも正確な射撃が出来るというわけだ。伊達に自ら視界を悪くしていない。
  ともなれば……


「相手は暗視ゴーグル持ちかキャスト……!」


  隣にいないと感知出来ないほどの小声で呟いた刹那、茂みに向かって一射。


(……!)


  正面を凝視していたおかげで、那波は咄嗟に右へと身体を転がし避ける事が出来た。
  まるで 「隠れても無駄だ」 とプレッシャーを掛けられているかのような威嚇……。
  最初にいた位置からここまでは十メートル程の距離があった。にも関わらずぶれない正確な一撃。
  どちらも前方から撃たれたことから、敵は動かず同じ位置で身を潜め、尚且つ長距離用のライフルを所持。
  さらには先の小声をも感知できることから十中八九、狙撃タイプのキャストと考えるべきだ。
  勿論、周辺にカメラやマイクなどが設置されている可能性も捨てきれない。
  敵が一人ではないことも考慮しなければならないだろう……。


(どうする……情報が少なすぎて身動きがとれない……。かと言って複数人いると仮定してもこのままずっと身を隠すのは不利だ)
「…………」
(前方だけでなく左右にまでいた場合、飛び出した瞬間にお陀仏……)


  背後にいた場合は既にこの状態でいることすら無意味になるが、まだ生きているということは大丈夫と考えよう。
  その後も相手は沈黙を保ち続けていた。
  無言の圧力からか、額から汗がポタリと流れ落ちる。


(敵が暗視ゴーグルだけではなく赤外線の類も所持しているなら声を出さずに身を潜めていても意味は無い、か……なら一か八か!)


  那波は腰にぶら下げてある筒状の物体を握りピンを抜き、前方に向かって放り投げた。
  部屋で作ってきた手製の即席閃光弾。
  それとほぼ同時に那波は目を腕で遮りながら一気に直進する。耳と目を奪う間に敵との距離を一気に詰める為に。
  しかし、無情にも放たれる一発の銃声。その瞬間、辺り一面は光に包まれた。
  そう、弾は那波ではなく閃光弾を貫いたのだ。
  お陰でもっと遠くで破裂するはずの手榴弾は、驚くほど手前で爆発。


「ごふっ……」


  目の前で爆発したおかげで破片の一部が腹部に突き刺さる。
  胃からこみ上げてくる鉄の味が口いっぱいに広がった。
  そして次の一射、さらにもう一射が放たれる。
  弾は両足を貫通し、バランスを崩した身体はそのまま地へとひれ伏す事になった。
  バタリ、と情けない音と共に少量の土煙が舞う。
  ……しばらくして光は収まり、再び闇がその場を支配する。
  両足を撃ちぬかれ、身動きの取れない身体。これではとどめを刺せと言わんばかりだ。
  どれだけの時間が経ったろうか。気味の悪い静寂はほんの一瞬でも長く感じる事が出来た。


「他愛もないな。期待はずれもいいところだ」
「……あら、それは自分へのお言葉かい?」


  眼前の深緑色のキャストは身体を強張らせた。
  那波は氷の力が収束された杖を頭に向けて問いかけた。
  そう、那波は今、男の背後をとっている。


「おっと、動くんじゃないよ」


  男は観念したかのように 「ふぅ」 と一息して問いかけてきた。


「……貴様、何故ここが解った」
「愚問だねぇ。アンタの使うその銃は、長距離ライフルの中でも一番飛距離が短い物だ。しかも弾は製造が最古ってこともあって専用のものしか装填できない。そこから位置を割り出すなんざどうということは無いよ。……それ、アンタの愛銃かい?」
「ああ、俺の……俺の父が愛用していた銃だ」


  男は心なしか、少し重たい口調で返してきた。


「父……ってことはアンタ、まさか」
「そうだ。俺はシュナイゼル・ショートラインの息子、”グレイス・ショートライン”だ」


  息子ということはつまりこの男は……シュナイゼルの葬式が開かれた時、最前列で泣いていたあの子供ということか。
  まさかこんな所で、しかもこんな形で再会するとは、なんという皮肉だろうか。


「そうかい……アンタが……」


  動揺した那波の一瞬の隙をつき、グレイスは身体を反転させ銃を突きつける。
  我に返った那波もすかさず杖を捨て身体を反り、胸ポケットにしまっていたリボルバーをグレイスの首もとへと向けた。
  魔法とは一瞬の気の緩みで威力も精度も落ちてしまうのだ。
  あれだけ油断するなとミレイユから教わっておきながら……情けない事だ。
  どちらもトリガーを引くだけで相手を仕留められる状況に陥ってしまう。


「…………」
「…………」


  額からこぼれ落ちる雫。
  互いに引かない緊張混じりの沈黙が流れる。
  一瞬にして一生を終える、この感覚、この緊張感。
  ミレイユが「この一瞬こそ生きていると最も実感できる瞬間だ」と評価する気持ちが少し解る気がした。


「……ふっ、いい目をしているな」


  不意に男がクスリと笑いながら言う。


「おや、生死をかけた戦いの最中に惚れるって奴? 生憎と彼氏は募集してないよ」


  こちらも冗談を混ぜて返してやった。
  やがてお互いが同時のタイミングで銃を納める。
  互いに殺すつもりはないということが解ったからだ。


「しかし俺も人のことは言えないな……まさかダミーに気を取られるとは」


  最後に両足を撃ったあの人形のことだ。
  賭けではあったが、視界と聴覚を奪ったあの一瞬だからこそ仕掛けられた……。
  いくら視覚と聴覚を最大レベルにまで引き上げていようと、それ故の弱点というものはある。
  強すぎる視覚は急な光だともろにダメージを受けやすい。聴覚もまた同じ。
  那波もこのグレイスも同じキャストなので、感覚をある程度遮断する術はあるものの、前もって解っていなければそれも難しいだろう。


「アンタの腕のお陰さ。普通手榴弾を投げた瞬間に撃ちぬくなんて芸当が出来る奴、そうそういないしね」
「皮肉にもそれが敗因となった訳だが……まあ、褒め言葉として受け取っておこう」
「視界ゼロの中でよくも足を狙えたもんだよ」
「目が見えなくとも、お前が最後にいた位置からあの環境下で動ける範囲は限られている。あとは運に身を任せるのみだ」
「運って……流石だねえ」


  実際のところ、撃ちぬかれなければ目と耳を塞ぎながら真正面から距離を詰めるしかなかった。
  並みのライフルならば魔法壁で防ぐことが出来なくもないが、グレイスの使う銃は飛距離が短い分、貫通力が他のライフルとくらべても群を抜いている。
  だがその分反動も大きくリスキーな武器なため、相当なモノ好きか実力者しか使わない。


「しかしなんの用で私をこんな所に? やっぱり……」
「安心しろ。俺は父の事でお前を恨んでもいなければ、殺そうとも思っていない」
「…………」


  那波は複雑な気持ちだった。
  とうの昔に自己嫌悪感はなくなってはいるが、実のシュナイゼルの息子が目の前にいるのだ。
  関与していないとはいえ、あの時引き止めて入ればという気持ちが蘇ってくる。


「そんな顔をするな。それに、お前は既に十分悩んでくれているのを知っている。父に代わって礼を言わせてもらう、ありがとう」
「グレイス……でも、それじゃ?」
「殺すつもりがないのは本当だが、これから共に協力し合う間柄として那波、お前がどの程度の実力者なのか知っておきたくてな」
「協力……?」
「それは僕から説明するよ」


  突然後ろから男の声がした。
  そこに立っていたのは我が十四番隊隊長、クランだった。


「えっ……隊長、何故ここに……」
「おっ、君が驚く顔は貴重だね。グレイスも良く見てみなよ」
「くだらん冗談を言う前に早く説明をしてやれ」
「はいはい……。ああ、ここで立ち話もなんだし、片付けて先生のところへ行こうか」
「先生……?」











  我が隊の隊長はシュナイゼルの一件を知る一人であり、また真相を知るべく行動しているラミネとも仲間だという。
  最初に那波に声をかけたのはクランなりの挨拶代わりなのだという事。
  グレイスに関しては個人的に那波がどういう者なのかを知りたくて今回の一件を仕組んでおり、他意はないそうだ。
  すべての事はラミネの許可の下行われていたというのだから意地が悪い……気がする。
  ちなみにクランのいう”先生”というのはラミネのことであり、色々世話になった為、そう呼んでいるそうだ。
  一同はラミネが在住する業務室で話をしている。


「まあまあ、そう怖い顔しないでくれよ」


  と、クランがなだめに入る。


「いやぁ悪いねぇ。でも、那波ならちゃんと乗り越えられるって信じてたよ」
「なかなか危なかった事もあったけど……それより、ラミネ。あの時は黙って行っちゃってごめん」
「んー? ああ、あの墓参りの事?」


  ミレイユと初めて会ったあの時、那波は自分の口でラミネに報告することができなかった。
  勿論、時間がなかったのもあったが、同時に顔を合わせる勇気がなかったのだ。
  会ったら、決意が揺らぎそうな気もあった。


「大丈夫さ、気にしてない。那波は那波の思う道を選んだんだろ? あたしゃね、正直あの時の那波の顔は見るに耐えなかった。隊長……シュナイゼルが死に、それを自分のせいと背負い込んで苦しむお前の顔はね……」
「…………」
「だけど、お前はちゃんと帰ってきた。そりゃ心配はしたけど、しっかり帰ってきてお前は今、ここにいる。それだけでも嬉しいもんだよ」
「ラミネ……」


  心の中で温かい何かが広がる感じがした。
  今では肉体の大半が機械のこの身で言うのもなんだが……ラミネには本当に感謝している。
  今の自分があるのは、ラミネやミレイユ……いや、それだけではない。きっと多くの人に支えられているお陰なんだと思う。


「いい話だね……っと、いけない。もうこんな時間だ」
「んー? ありゃ! 夜中の三時じゃないか」


  クランとラミネが時計を見て驚く。
  話し込んでいる内にもうこんな時間になってしまったようだ。


「……まあ、概ねの事は伝わったかな? 那波」
「大体は、かな」
「シュナイゼルの死の真相を突き止めるのは目的だけど、うちらはその前にアークスだ。そのことを忘れないようにね」


  勿論だ。
  シュナイゼルが守りたかったこの世界を守る事も、重要なこと。
  その為にも、那波は……いや、那波たちはアークスになった。
  それは忘れてはならない。


「うちらのことは厳密に。外ではいつもどおり振る舞うこと。いいね?」
「了解しました、ラミネ隊長」
「よーし、それでは……解散!」


  こうして、長い一日は終わりを迎えた。
  新しい出会いと発見。そして確実に変わる自分の環境。
  いつまでも平和な日々が続けばいいのに……
  那波はそう思いながら、夢の中へと潜る――


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