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まぎあっと。PSO2

PSO2をしながら、その雑記、初心者向け講座、そして自作小説など書いていくブログです

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 Time After Time 2章 第五話  『嵐の予兆』



「――に……ろ!」

「いや……! 待ってて! 今岩をどかしてあげる!!」


  少女は小さい身体と、その細い腕で自分よりも何倍もの大きさのある岩をどかそうとしていた。
  額からは汗が垂れ、掌はゴツゴツとした岩が擦れて血が滲んでいる。
  痛い。すごく痛い。
  だけど足元には、もっと痛い思いをしているであろう人がいるんだ。
  泣き言なんか言ってられない。だけど……




「どうして……! どうして動いてくれないの!」

「もういい。お前の力ではこれを動かすのは無理だ」

「でもっ……!」

「……那波、良く聞きなさい。この地図を頼りに、出口へ向かいなさい」


  そう言うと男は地形マップをデータで那波に飛ばす。


「嫌! 外に出るんだったらおじさんも」

「那波!!」


  那波が駄々をこねると、間髪入れずに男は怒鳴りつけた。
  身の毛もよだつ突然の大声に、那波の体は強張る。


「……大丈夫。俺もすぐ合流するから。だから、いきなさい」

「ほんと……?」


  不安そうな声で、涙をすすりながら男に問いかける。


「ああ。だから決して振り向かず、精一杯前を向いて走り続けるんだ」

「…………」


  那波はその意味がわからなかった。
  どうして一緒に行けないのか。なぜ振り返っては行けないのか。
  幼い那波には、何一つ理解できなかった。
  ただ一つ感じた事は、その言葉に従わなくてはいけない、ということ。
  何となく、そんな感じがした。


「いいね?」

「……わかった。ぜったい、後から来てよ?」

「ああ。さぁ、行くんだ」


  男はそう促し、那波はしぶしぶ男に背を向けて歩き出した。
  ふらつく足を必死に支えながら、一歩、また一歩と。徐々に速さを増して。
  だが本当にこのまま男を残して先に行ってもいいのだろうか。
  自分にもあの場で何かできることがあるのではないのだろうか。
  そう思い、男のことが気がかりで言いつけを破り、振り返ろうとしたその時――


「振り返るんじゃない!!」


  怒鳴り声が周囲の大気を震わすかのように響いた。
  那波は振り返るのを止め、目から涙をこぼしながら必死に走りだす。
  小さな身体で、トンネルのように真っ暗で長い通路を走り抜ける。
  短い距離だったかもしれないが、那波にとってはとても長く感じた。
  暗く、狭く、そして息苦しく……得体の知れない何かが、後ろから追ってくるような恐怖すら感じた。
  那波は逃げるように走る。
  疲労や傷による痛みを必死に我慢しながら無我夢中になって走った。
  もう駄目なのではないか、そう思った時、光輝く扉の様なものが見えてきた。


「出口……!」


  長く続いた恐怖からようやく逃れられた瞬間だった。
  外から入ってくる朝日の光。
  那波はようやく遺跡の外へと出ることが出来た。


「外に出られたよ! おじさ――」


  やっと助かる。嬉しさのあまり、男の名を呼びながら振り返ろうとしたその時だった。
  強烈な地響きとともに、天そのものが崩れ落ちてきた様な、轟音。
  その音は紛れも無く、先ほど走ってきた道の奥からだ。


「ま、待って! まだ中にはおじさんが!!」


  那波が道を引き返そうと踏み始めた頃にはもう遅い。
  出口は完全に岩で塞がれていた。


「そんな……そんな……」


  絶望のあまり那波はその場に膝をつく。


「うぅ……おじさん……うわああああっ!!」


  土煙の中、那波の悲痛な叫び声だけが響き渡った。





――――――――
――――――
――――





「――おじさん!!」


  布団をはねのけ、手を前に伸ばしたまま上半身を勢い良く起こす那波。


「…………」


  状況を判断するのに数秒を要したが、ようやく理解した。
  ここはアークス宿舎、那波の部屋。今は朝の四時。


「……はぁ」


  那波は頭をぽりぽりと掻く。
  

「嫌な夢……」


  はねのけた布団を畳み、汗にまみれた服を脱衣所に脱ぎ捨てて湯を浴びる。
  この宿舎は部屋一つ一つに風呂やトイレが完備されているので、いつでも気兼ねなく入ることができるのだ。

  「市民を守るアークスだろうと、個人の尊重はなされるべきだ」

  とお偉い方が言ったおかげで、こういうプライベート面も考慮されることになった。有難いことだ。



  キュッと白い蛇口をひねり、湯を止める。
  しばらくそのままで、上を向いてボーッとしていた。


(あんな事、なかったはずなのになぁ……)


  大きなタオルで髪を拭きながら、今朝の夢の事を考えていた。
  那波はシュナイゼルと仕事にでかけた事など無いに等しい。
  そもそもあのシュナイゼルが、幼い那波をつれて危険な場所へなど行くはずもない。
  夢のなかの那波はアークスの隊員みたいな格好だったが、そんなはずもない。


(……ま、夢だし深く考えても仕方ないか)


  結局、その結論に達した。
  夢は夢。体験したことを断片的に切り取って、繋ぎ合わさった夢を見ることもある。そういうことだろう。


「ちょっと早いけど、行くかな」


  時間は午前五時半。
  出勤にはまだ早い時間だが、部屋にいてもやることもない故、職場へと向かうことにした。


「さて、私よりお早い意識高い系さんはーっと……」


  そんな物好きいないだろう、と内心で解っていながら冗談交じりにドアノブを回す。
  が、ノブは最後まで回りきらず、途中で止められてしまう。


「そりゃ誰もいないか……」


  案の定、カギがかかっていた。
  仕方がないのでポケットからカギを取り出し、ドアノブへ差し込んでカギを開ける。今度は最後まで回った。
  普通は自動ドアやら、指紋認証システムなんかで扉が開くのだが
  十四番隊などという地位が低い部隊は”旧校舎”の方にまとめられている。
  旧校舎では経費削減のためなのか、もれなく時代遅れなシステムがついてくるというオマケ付きだ。そんなもの結構である。
  ドアはノブ式。部屋はオンボロ。デスクは耐久性の低い素材。


「まあ、これはこれで気に入ってるんだけどね」


  古いとはいっても、昔はみんなこんな感じだったという。
  実際、仕事をする上で不便に思うことはないので、何の問題もないだろう。



  那波は自分専用のデスクの椅子に腰を掛ける。
  ミシっという音がした。別に重量オーバーというわけではない、普通だ。
  

「座り心地が良すぎる椅子なんて、かえって眠たくなるだけさ」


  自分に対する慰めの言葉をかけてみる。
  と、同時に扉が開く音がした。


「やあ、おはよーさん。早いね?」


  本日二番乗りはクラン隊長だった。


「おはようございます。ちょっと目が冷めちゃって」


  受け答えをしながら那波は席を立ち、備え付けのコーヒーサーバーの前へと移動する。


「飲みます?」

「おお、ありがとう。頂くよ」


  じゃぼじゃぼと音を出しながら、二つのコーヒーを淹れおわった。


「もしかしてあれかな? 気になる人でも出来たかな? そうかぁ、それは気になって夜も眠れなくなるのは無理もない!」

「?」

「互いに拳をぶつけあい、戦場の中で一時の想いを感じてしまった。あぁ、でも私たちは敵同士っ! あなたとは交われないわ、グレ……あ」

「…………」


  真横まで来た那波は瞼を細め、瞳だけで下を見ながら持ってるカップをクランの頭上にまで上げる


「いやややや! 嘘ウソ! 冗談だって!」

「……どうぞ、それにグレイスは敵じゃないでしょう」

「ど、どうも」


  ズズズ……と音を立てながら二人で朝の一杯を胃に流し込む。
  程よい苦味と暖かさ。朝のお供はやはりコーヒーだろう。


「やっぱ朝の一杯は目が冴えるね。いい刺激になるよ」


  そのふやけた頭にもいい刺激を与えてくれる事を願おう。


「ああ、そうそう」


  クランが思いついたように話を切り出す。


「みんなが来る前に伝えておこう。今回は新しい惑星の調査に出かけるよ」

「新しい惑星?」

「そう! 砂漠が端から端まで広がる殺風景な星……その名も、”惑星リリーパ”!!」


  多少自慢気に惑星の紹介を始めるクラン。
  今までナベリウスしか出向いたことがない故、多少の新鮮味はある。


「砂漠……ですか。暑そうではありますね」

「暑いよー。なんたって砂漠だからね!」


  あまり答えになってない気がする。


「でも、なぜそんな事を今……? 皆が集まってからでもいいのでは」

「そうだね、本題に移ろうか」


  クランが机へ向き直り、体を少し前に倒しながら口元の前で手を組む。
  目は若干細まり、いつものおちゃらけた表情とは反対の、真剣な顔つきになった。


「グレイスの事は覚えてるよね?」

「ええ……勿論」


  先日挑戦状を叩きつけてきた、シュナイゼルの息子のことだ。忘れるはずがない。


「先遣隊としてグレイスのいる三番隊が惑星リリーパに向かったんだけどね、突如連絡が途絶えたんだ」


  那波は流石に驚く表情を隠しきれなかった。
  一度しか対峙してないとはいえ、あれほどのセンスと腕を持つグレイスが音信不通になったというのか。


「それで、彼は?」

「見つかったよ、三日後にね。メンバーに死者はいなかったものの、皆、再出発には時間がかかるほどの重症だ」

「あのグレイスが……」

「グレイスの消息が途絶えた時、かなり大きな反応が一瞬だけ出たんだ。だけどあまりにも一瞬過ぎて敵の判別もできず、肝心のグレイスも内部メモリの破損が酷くて戦闘時の記録が―――」


  話の途中で扉がまた開いた。
  そこに立っていたのは……グレイス本人だった。


「グ、グレイス?!」


  クランが驚きの声をあげる。


「……旧校舎とはここまでカビ臭いものなのか」


  入ってきて早々のいちゃもんである。


「そりゃグレイスの所属は天下の第三番隊。設備も環境もこことは比べ物にならないだろうよ」


  クランが冗談交じりで少し嫌らしい反論をする。


「ふっ、まあそういうな。……那波」

「……?」


  いきなりの指名に驚いたが、「どうした」と目で反応する。


「惑星リリーパへ調査しに行くなら用心することだ。あそこは間違いなく、何か得体のしれないものが存在している」

「得体のしれないもの……」


  その惑星自体、足を踏み入れていない那波には検討もつかない。
  が、グレイスがわざわざ忠告をしにくる程だ。余程の敵がいるのだろう……。


「でもなぜ? なぜそんな任務がうちの所に回ってくる?」


  先程からそれが疑問だった。
  三番隊と言えばあのシュナイゼルも属していた精鋭中の精鋭。
  不意をつかれたとはいえ、その隊ですら負傷者を出す任務が、地位の低い十四番隊に回ってくるわけがない。
  間を入れずにグレイスがさらっと応える


「俺が推薦したからだ」

「な……なぜ?」

「俺はお前の腕を買っている。どんな理由があってわざと地位を下げたのかは知らないが、お前の実力なら三番隊に所属するのも夢じゃないはずだ。それこそ何故なんだ?」

「…………」


  那波は答えるのを躊躇った。
  確かにラミネやクランの仲間で、シュナイゼルの息子とはいえ簡単に信用していいものかどうか。
  「自分以外は全て敵として見ろ」という師からの教えもあり、何よりどこで誰が耳を立てているかわかったものではない。
  それにたとえ味方だったとしても……


「ふん、答えたくないのならそれでもいい。貴様の考えていることは大体解るし、その判断は間違いではない。」

「すまない……」

「それにだ、三番隊は勿論のこと、他の隊も今自分の仕事で手が一杯でな。すぐに動けるのは貴様ら十四番隊だけ、というのもある」

「……わかった。わざわざすまないね」

「お前にこんなところで死なれても困るからな。では、確かに伝えたぞ」

「あっ、ちょっと待った」


  グレイスが足を止めて顔だけを振り返らせた。


「ラミネ隊長はどうしたんだい?」

「……那波、私情を挟むと命取りになるぞ」

「別にそういう訳じゃ……」

「ラミネ隊長なら現在別の任務中でここにはいないんだ。だから安心しろ」

「だからそういう訳じゃ!」


  「ふっ」っと言い残してグレイスは去っていった。
  結構、図星だったのかもしれない。
  ラミ姉がそうそう簡単にやられるようなたまじゃないのはわかってはいたが、やはり心配にもなる。
  無論、グレイスの事もそうだが……何にしても


「気を引き締めて行かないと……だね」


  クランが横でそう呟いた。


「ですね……」


  そうこうしてる内に、通路の向こうから健太郎とニーナが走ってくるのが見える。


「隊長!!」


  勢い良く部屋に入ってきたのは健太郎だった。


「今のキャストって、まさか!」

「ん、グレイスのことかい?」

「はあぁー! やっぱり三番隊のグレイスさんなんっすね!」


  大分興奮しているようだ。


「誰? グレイスって」


  遅れて追いついてきたニーナが問いかける。


「ばっ、お前、知らねーのか! 三番隊の中……いや、アークスの中でもトップクラスの腕を持つ狙撃手! グレイス副隊長だぜ!」


  それは知らなかった。
  グレイスが三番隊の副隊長なのか……ということは……


「そ。シュナイゼルの後を継いだんだよ。といってもまだ若手だから副隊長止まりだけどね」


  クランが小声でこっそりと教えてくれた。
  なるほど……。あれだけ立派な親を受け継ぐなんてそうそう簡単なものじゃない。
  ただの推薦で通った腕でもなかったし、相当特訓を積んできたのだろう。
  先日の戦闘も、明らかに手を抜いているような……那波を試している様な感じすらした。
  しかし……


「そんなグレイスが忠告までしてきたのに、本当に私らが調査に出向いていいんですか?」


  健太郎達に聞こえないように耳打ちをする那波。
  隊長もグレイスも、今回の惑星に対してかなり警戒をしている。
  そんな所に、先日結成されたばかりの十四番隊などが出向いて良いのだろうか。
  場合によってはあの子たち……健太郎やニーナを危険にさらすことに……


  そこでふっと、今朝の夢を思い出した。


「……っ?!」


  その場でふらつく那波。


「ちょ、大丈夫かい?」
「あ……いえ、なんともないです」


  なんでだろう。なぜさっきまで忘れてた夢をまた思い出したのだろうか。
  少し嫌な胸騒ぎがする。


「僕も出来ればもっと上の位の隊がやるべきだと思うんだけど、さっきの話にもあった通り、出向ける部隊がいなくてね……なんともならないんだ。かと言ってこのまま放っておくわけにもいかない。」
「…………」
「大丈夫。いざとなったら僕も全力で君たちを守るから、安心するんだ」


  クランがくすりと微笑む。
  確かに……だが、何もない事に越したことは無い。
  無事に調査が終われば良いのだが……










「いよいよ明日からか……」


 惑星リリーパへの調査が明日から開始となる。
 グレイスすら深手を負った所だ、準備は万全にしておかなければいけない。


「一応、持っていこうかね」


  押し入れにしまっていた布できつく縛り上げた棒状のものを取り出す。


「ミレイユには時が来るまで使うなって言わててたけど、無いと厳しそうだしねぇ」


  光を放ちながら見る見る縮まっていくその棒をウェポンケースに移し替えた。
  アークスで支給されるこのケースには、どんな武器もコンパクトサイズに縮め収納することが可能なのだ。
  これにより多くの武器を使い分ける人でも、苦労なく持ち運びすることが出来る。


「やれやれ、フォトンさまさまだね……」


  フォトンのちからにより武器などを分子レベルで分解、そして再構築が出来るという仕組みらしいが、難しいことは正直専門外だ。
  あの剣でどこまで健太郎やニーナを守ることが出来るかわからない。
  剣術を含めた一通りの武器の使い方はミレイユにしごかれたので会得はしているが、そもそも自分の剣ではないし……。
  

「そろそろ寝るかね。体調崩したら何にもならないしね」


  部屋の明かりを消し、就寝することにした。
  相変わらず殺風景で何もない部屋だ。明かりを消すことでよく分かる。
  窓からは「ホー、ホー」と鳥の鳴き声らしきものが聞こえる。
  新しい惑星、リリーパ、砂漠……
  行ったことがないはずなのに、最近どこかで見た気がするのは気のせいなのだろうか。

  眠気でウトウトとする中、考え事にしがみつく。

  砂漠……遺跡……崩壊……


  気が付くと那波の意識は夢の中へと旅立っていた……




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